高森町歴史民俗資料館 時の駅で企画展「刀剣が語る幕末の歴史」が4月27日(土)から6月9日(日)まで開催されています。
天狗党の伊那谷通過から160年
1864年、朝廷に尊王攘夷の志を訴えようと水戸から京へと向かった天狗党。その進路には私たちの町・高森町も含まれていました。この天狗党の伊那谷通過から160年にあたる今年2024年、時の駅では「関連する人物の刀を展示し、幕末の伊那谷を語る機会にしてもらおう」とこの展示が行われています。
高森にもドラマがあった
展示は水戸斉昭の書と、高島藩諏訪家に伝来する刀から始まります。高島藩は幕府の天狗党追討令に従った藩であり、その戦いはかなり激しいものでした。
天狗党が高森・飯田を通過したのは11月24日のことだそうです。茨城県南部を出発したのが11月1日ですから、1か月に満たない期間で、時には交戦しながらここまでやってきたことになります。
実は、山吹で天狗党から出奔した浪士がいました。名前を郡司照光と言い、彼を匿ってくれた家に残していった刀が昭和26年に吉田神社に奉納されて今に伝わっています。この刀はところどころ黒ずみ、鍔から15㎝~20㎝ほどのところにはハッキリそれとわかる刃こぼれが。生々しい戦いのあとを感じます。
高森町には他にも天狗党関連の物が残されています。槍の穂先と、直径10㎝ほどの大砲の砲丸です。これらは伝馬役農民にお礼などとして与えられたものだそうで、そのエピソードにはどこか人間の息遣いがあるような気がしました。
ちなみに高森町内ではもうひとつ事件が起きていました!なんと出原村のとあるご隠居が天狗党に連れていかれて……!?
まったく知らない話だったので、パネルを読んで本当にびっくりしました。この顛末についてはぜひ展示で確かめてみてくださいね。
他にも天狗党を率いた武田耕雲斎の刀や素懐書の下書き、飯田藩お抱えの刀工により打たれた刀、芹沢鴨や土方歳三といった新選組の重要人物に関係する刀などが展示されています。拵えや白鞘も一緒に並べられている刀が多く、また刃文も比較的わかりやすいのではないでしょうか。比較して鑑賞するのがとても楽しかったです。
個人的に興味深かったのは、飯田藩お抱えの刀工により打たれた刀。飯田にも刀工がいたという話は聞いたことがありましたが、実物を見るのはもちろん初めてのことだったので、とても面白い経験でした。
また、幕末といえば新選組ファンの方がかなりいらっしゃると思います。そういった皆さんはこちらの刀、見逃す選択肢はありません。
芹沢鴨の刀は二尺八寸(刃渡り83㎝)もある大きなもの。大切先で、全体的にごつい印象があります。そして刃文は三本杉。▲▲▲みたいな刃文で、これが杉が並んでいるように見えるので三本杉と呼ばれています。全面にこの刃文が連なっているのがバッチリ見えるので、じっくり眺めてみてください。
土方歳三の愛刀と言えば、現在は日野市の土方歳三資料館にある11代和泉守兼定があまりに有名ですが、今回はそれ以前に使用され後に永倉新八へ譲られた刀が展示されています。備前刀ですが、それとしては珍しい直刃という刃文で、切れ味を重視していることがわかります。刀身には傷が多く残っていました。
歴史の大きな流れからすると、伊那谷通過というのはあまり大きなトピックではないかもしれません。けれど高森町にも小さいながらも天狗党に関するドラマがあり、それらがまとまってひとつの歴史を形成しているのではないでしょうか。地域の歴史を知ることは、その先にある大きな歴史への一歩なのだと今回の展示で感じました。
5月19日(日)午後2時からは、展示説明会が予定されていますので、ぜひお出かけください。
続く刀剣ブーム
10年ほど前にオンラインゲームをきっかけとして始まった刀剣ブーム。それまでは限られた愛好者のみが来場するものだった刀剣展ですが、今では各地で大きな話題となっています。特にオンラインゲームのファンには、キャラクターのモチーフとなった刀剣にゆかりの場所を訪ねる聖地巡礼も人気で、飯田市に足を運ぶファンもいるそうです。
常設展も見てみよう
時の駅では、高森町にある古墳や、このあたりを治めていた松岡氏や座光寺氏についての展示など常設展示も充実しています。見どころはたくさんありますが、町内の古墳から出土した日本最古の貨幣・富本銭や、皇朝十二銭のひとつ富寿神宝などは特に見ておきたいものです。
昔使われていた民具などの民俗資料も見やすく展示されていますよ。特に民俗資料の部屋は、私が小学生の頃はお化け屋敷みたいだったので、そのイメージがだいぶ変わりました……。
高森町の歴史を一から十まで知ることができる時の駅。高森町民は入館料無料なので、これを機会にぜひ行ってみてくださいね!
高森町歴史民俗資料館 時の駅(@takamori_tokinoeki) • Instagram写真と動画